設定した状況
15mの涸滝をトップがリードした後、セカンドの登攀をATCガイドで確保していたらセカンドが落ちて宙吊りになってしまいました。セカンドは元気です。
ロープは9mm50mをシングルで使っていました。
セカンドはハングまでは5m、地上まで5mの所でぶら下っています。
課題
A。セカンドが宙吊りから自分で脱出する方法?
B。トップがセカンドを救出する方法?
C。宙吊り再発防止にはどんな方法がありますか?
<検討結果>救出救助
A。セカンドが自力で1本のメインロープを登る。
シュリンゲでマッシャーかフレンチでフリクションヒッチを作るかあるいはアッセンダーを使って足場用とハーネス用の二つをメインロープに架け、交互に上にずらせながら登ることが出来ます。
比較的簡単に登れ、登り切るまでにはコツもつかんでベテランになるでしょう。
BⅠ。 リード者がATCガイドのロック解除用ホールに5mm程度の細引きをかけて、メインロープに対して直角に引けば解除します。しかし解除した瞬間にメインロープは勢いよく流れ、セカンドはグランドフォールする危険が非常に大きいです。
そこで解除する前にメインロープにフリクションノットまたはアッセンダーを使って別の支点にシュリンゲで繋いでおきます。この後ATCガイドを解除してやればセカンドは落ちません。荷重をシュリンゲに移してからメインロープを半マストにしてロアダウンしてやります。
ところがここでまた問題が発生します。今度は荷重が懸かっているシュリンゲを解除できません。解除する方法は二つで1つ目はナイフでシュリンゲを切断してメインロープに荷重を戻してやります。もちろんメインロープの半マストは仮固定しておきます。
二つ目はシュリンゲをフィックスせず半マストにして仮固定しておき、メインロープを半マストに替えたら、シュリンゲの仮固定を解除し、半マストを緩めて徐々に荷重をメインロープに戻します。
(半マストの仮固定やフリクションノットについては自分で勉強してください)
BⅡ。 残っているロープの先端をセカンドまで下ろし、セカンドがそれをハーネスに繋いでから自分がぶら下っているロープを切断し、ロアーダウンで下ろしてもらう。
BⅢ。リード者が懸垂
約40m残っているメインロープを使ってリード者が懸垂し、途中で宙吊りのセカンドを収容する。これはかなり複雑な作業であり、また慣れが必要ですがセカンドが負傷していたり、パニックになっていて介助しなければならないときなどに使えますので一度は練習しておくと良いです。
以上を基にしていろいろなバリエーションを考えてください。
再発防止
ATCガイドなど自動でロックする道具や技術(カラビナ2枚を使うオートロックなど)はスラブなど宙吊りの危険があるときは使わないこと。
またフィックスしたロープをアッセンダーで登るのも同じ危険(宙吊り)があるので安全な??状況でしか使わないこと。
今回はリード者が余ったロープを手元に引き上げてからセカンドの確保をしていますがもしリード者の手元にフリーのロープがない状態で宙吊りになるとセカンドは自力で登るか下る以外にありません。
ポイント
①今回使った重要な技術は”荷重移動”です。フリクションヒッチと半マスト、仮固定の組み合わせです。アルパインクライミングや沢登りなどされる人はマスターされることをお薦めします。
②克服しなければならない状況にどんな危険が予想できるか(危険予知)を考えた上でロープワークの方法を決めることが重要です。
追記
(2014/1/13)友人から「最近のビレーデバイスにはセカンドをロアダウンできるものもあるらしい」とのアドバイスをいただき、調べたところ確かにメーカーの使用説明書にそのように記載されているもの(ATCガイド新など)があります。今度試して見たいと思いますが全メーカーを買うことも出来ず困っています。仕方ないので読者各自で試していただきたくお願いいたします。そしてその結果をコメントで公表していただくともっと嬉しいです。
「出来る」と「誰にでも確実に出来る」とは違うのでくれぐれも機能をよく理解した上で試してください。
なお今回は空中での宙吊りを想定していますが滝など流水中でロックした場合、瞬時に救出しないと溺死や低体温症に繋がりますのでその点も頭の片隅の入れて確保方法を選ぶことも大事です。
end