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”霧(kiri)”

自分で楽しんだ登山の記録を思い出しながらもう一度楽しんで書いています。 このブログを見ていただいた人に山や自然に興味をもっていただき、そして好きになって頂ければとてもうれしいです。 更にコメントをいただけるとなおうれしいです。コメントは山行名をクリックすると一番下に投稿欄が出ます。
”霧(kiri)” TOP > その他 > 登山と一酸化炭素中毒

登山と一酸化炭素中毒

はじめに
 駐車場の車の中で暖をとるために登山用バーナーを使ったことで一酸化炭素中毒にかかって
 しまいました。幸い気が付くのが早かったので重大トラブルは避けられましたが一酸化炭素
 中毒は車に限らずテントの中での調理などでも可能性は高いので反省も含めて調べたことを
 まとめてみました。

一酸化炭素とは
 炭や灯油、ガス(プロパンやブタン)などの燃料を燃やすと炭素一つと酸素二つが反応して
 二酸化炭素(炭酸ガス)が発生します。このとき酸素が充分供給されていればいいのですが
 密閉されたテントや車内だと酸素が足りなくなり、炭素に酸素が一つだけしか反応出来なく
 なり一酸化炭素が出来てしまいます。
 また、ニ酸化炭素(炭酸ガス)が高温の金属に触れた場合も一酸化炭素が発生します。

一酸化炭素中毒とは
 人間は空気(酸素)を吸うと肺で血液中のヘモグロビン(赤血球)が酸素と結びついて体の
 隅々に送り届けます。ところが空気中に一酸化炭素があるとヘモグロビンは優先的に一
 酸化炭素と結びついてそれが血液に乗って体内を回るので体内に酸素が供給されなくなって
 しまいます。(酸欠状態になる)
 一酸化炭素は酸素の300倍もヘモグロビンと結びつき易いので空気中に0.07%の一酸化炭
 素があるとヘモグロビンの半分が一酸化炭素と結びつき、体内への酸素供給量は半減し、特
 に脳の細胞が破壊されてしまいます。
 ちなみに2011年には事故で焼く1000人、自殺で約1000人の人が一酸化炭素中毒で亡くなって
 います。
  症状
 一酸化炭素と結びついたヘモグロビンの量(これをFCOHbと言う)が10%になると症状が出始
 めます。
 はじめは頭痛、めまい、どうき、息切れ、吐き気などで顔は赤く火照ったようになります。更
 に進むと意識が朦朧として痙攣が始まり、昏睡状態になって死に至ります。
 診断
 前記の症状や異変に気付いたときの状況(環境)、そして動脈採血をしてFCOHbを測定しま
 す。通常は1%以下。但し初期症状は風邪などに似ているので状況説明をシッカリ行わなう
 ことが大事です。「一晩様子をみよう・・」などと判断すると治療が遅れる分ダメージは大き
 くなります。
 治療
 応急手当は新鮮な空気のところに移動して沢山の空気を吸います。
 そして出来るだけ早く100%の酸素を高圧室などで体内に送り込んで一酸化炭素を体から排
 出します。高圧室が無い場合は酸素マスクで出来るだけ多くの酸素をFCOHbが平常に戻るま
 で供給し続けます。脳細胞の壊死は酸欠状態の時間によって決まります。
 後遺症
 治療により一旦は症状が回復しても脳細胞の壊死は時間がたってから始まるので数日から数
 週間後に意識障害、頭痛、記憶力低下、視野狭窄、失語症などの後遺症がでる場合がある。
 前で書きましたが後遺症は酸欠の度合いと時間で決まるので一刻も早く酸素を吸引すること
 が大事です。

そして今回の経験
 雪のため西吾妻を断念して25日の12時ごろ那須マウントジーンズスキー場の駐車場に到着す
 る。そのときは晴れていたので14時頃まで車内で読書などして過ごす。
・14時頃から雪が降り出し冷えてきたので車内でバーナーをチョロチョロと炊く。このとき
 焼き網を熱した方が効率的かと思いストーブの上に乗せて読書を続ける。
 この焼き網が炎で高温になり、炭酸ガスが接触分解して一酸化炭素になった可能性もある。
・15時頃に読書に飽きて、ストーブの上の焼き網を取り除いたら炎が赤かったので直ぐに消し、
 後部ドアを全開にしてしばらく(15分くらいか?)新鮮な外気を吸う。
・そろそろ良かろうとトイレに行くと体がフラツキ、少しめまいを感じた。またトイレの鏡に
 映った顔は火照ったように赤くなっていた。
・むかし経験した酸欠とは様子が違うので一酸化炭素中毒だろうと思った。
・15:30ころ、駐車場は標高1000mなので麓の道の駅まで下りることにして車で出発する。
・運転しているうちに眠くなったので窓を開けて冷気をいれ頭を冷やしながら走る。寒かった!
・道の駅に着いても眠いので「ここで一人で眠るとそのまま・・・」と不安を感じて、病院へ
 行くことにする。時間は16時頃だが一人で病院を探すのは難しいと思い消防署に駆け込むこ
 とにして一番近い消防署に向け出発する。
・16:30頃黒磯消防署に到着し、事情を話して相談に乗ってもらう。とりあえず救急車に乗せ
 ていただいて身体の状況を確認しながら病院を探すことになった。このときの心拍数は80
 (私の平時は50前後なのでかなり高い)、血圧は190(平時は130以下なのでこれも高い)
 体温は36.3で少しだけ高い。酸欠の脳や体が心臓に「酸素を送れ!」と要求し、心臓が頑
 張っているのだと感じた。
・いくつもの病院で断られたが救急隊員が一所懸命探してくれた結果那須赤十字病院で「満床
 なので入院は出来ないが見るだけなら」とOKをもらう。
 受け入れ病院がない時は消防署に泊めてもらおうと思ったりもした。
・17:30頃那須赤十字病院に到着し、状況は事前に連絡してあったので直ぐに動脈採血を行っ
 てFCOHbを測定する。結果が出るまでの間にMRIで脳を撮影する。
 この時の幸運は救急担当医が呼吸器内科の先生で一酸化炭素中毒をよく知っていられたこと。
 動脈採血の結果、FCOHbは24.8%であり即入院と決まり直ぐにマスクで100%酸素の吸引を
 開始する。入院期間は1週間から2週間と言うことだった。
・酸素吸引開始から2時間半後に2回目の採血 結果は8.3%と減少していてひとまずホッと
 した。
・5時間半後に3回目の採血 結果は2.7% 酸素量を半分にする。
・13時間後に4回目の採血 結果は1.0% 通常に戻った。脳内に溜まっている一酸化炭素を
 追い出すため酸素量を1/5にして吸引を続ける。
・2日後に酸素吸引を停止した。
・2日半後に5回目の採血 結果は1.0%で安定していることを確認。
・4日後に再度MRIを撮影して異常は見られなかった。
・1ヶ月後に地元の病院でMRIを撮り、診断を受けること。また後遺症の症状を感じたら直
 ちに病院で診察を受けることの指示と紹介状をもらって1月29日に退院し帰宅した。
・1月31日現在、まだ異変は感じないが後遺症が出ないことを祈っている。

対策
 一酸化炭素の発生はテントや車内に限ったことではありません。ものを燃やせばいつでも
 どこでも危険は付いて回ります。 ”一にもニにも換気”です。
 登山に関係するのはテントと車内泊なのでそれについて思いつく注意点をあげてみます。
 テント
 テント内のストーブ使用はガスカセットメーカーもストーブのメーカーも禁止しています。
 しかし、実際問題雨の日や強風、吹雪では外での調理など無理です。テント内でやるしか
 ありませんが、ベンチレーターの他に入り口の下部も少し開けて外気を導入するように心が
 ければ危険は小さくなると考えます。特に降雪の中では積もった雪が通気口を塞いでしまう
 ことも考えられるので充分注意してください。
 車内泊
 窓ガラスを少し下げてベンチレーターとし、反対側のドアを少しだけ開けて外気を取り入れ
 るのが良いと思います。
 赤い炎は危険
 ガスの場合、換気がうまく出来ていれば炎は青白いです。これが赤っぽくなったら酸欠で一
 酸化炭素が発生しているサインなので直ちに火を消してドアや出入り口を出来るだけ大きく
 開けて外気と入れ替える。また吸ってしまったら出来るだけ新鮮な外気を深呼吸する。

 最後に何よりも大事なことは一酸化炭素中毒の知識を持つことだと思います。
 この記事を読んでいただいた方はテントや車内で火を使う際に是非お仲間と一酸化
 炭素中毒を話題にして私の経験を”他山の石”としていただきたくお願いいたします。

省みて
 密閉した部屋でものを燃やせば酸欠になり、一酸化炭素が発生し、中毒になることは充分承
 知しており、今までもテント内や車内でガスなどを使うときは換気に気を配っていました。
 当初はテントならベンチレーターを開け、入り口も小さく開けて新鮮な空気を入り口から取
 り入れ、ベンチレ ーターから排出。車もドアを数センチ開けておくように心がけてきまし
 た。ところが最近、テントではベンチレーターは開けるが入り口を閉めることがあったり、
 車もドアや窓を開けなくても問題が起きないようになり、何故かな?と疑問を持っていた。
 理由として、テントはゴアなど通気性のある素材が使われ、車もエアコンを外気導入にして
 おけば外部との換気が確保されているのか?と勝手に都合よく解釈して、次第に気遣いを怠
 るようになって来ていました。ここに油断がありました。
 今回もその延長で車内でコンロで暖房をとってしまったことが大間違いでした。
 ただ一つだけ気持ちが楽だったのは今回(最近はいつもだが?)単独だったことである。
 もしパーティーで今回のようなミスをして仲間を傷つけたらと考えると背筋が凍る思いです。

P1140522.jpg
病室から見た山々 左から 男体山(2484m)、女峰山(2483m)、高原山(釈迦ヶ岳1794m)

P1140524.jpg
左から 大佐飛山(1806m)、雲が懸かる那須連峰(茶臼岳1915m)


end
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[ 2013/01/30 16:28 ] その他 | TB(0) | CM(10)
データをありがとうございます。
FUYOUさん、関心を持っていただきありがとうございます。
そして実験をしていただき、思いもかけないことを初めて知りました。
登山用バーナーの構造上の問題もあるのですね。
教えていただいたことを念頭に置いて安全に山を楽しみたいと思います。
3月4日に後遺症有無確認ののMRIを撮ることになっていますので結
果がでましたらご報告させていただきます。
丁度1ヶ月たってなんだか物忘れがひどくなったようで1日の半分は
探し物です。年齢のような気もするしますが・・・・。
火の使用を止めるわけにも行きませんがとに角「火を炊く時は換気」を
し、風上側にいるように心がけます。
[ 2013/02/27 23:20 ] [ 編集 ]
いろいろ研究
CO中毒の記事を読みいろいろ実験してみたのですがその結果わかったことを報告します。
①山用のバーナーで上に何も載せずに燃やすとどうやっても赤い炎が出る。
②台所のガス台では上に何も載せなくても青い炎だけである。
③両者の違いはバーナーの真中に空間があるかなしかの違いだけなので台所用では炎の中心部にも酸素が供給されるが、山用では空間がないので炎の中心部には酸素が供給されない。これが両者の炎の色の違いの原因
④山用バーナーでも上に何かを載せて炎が拡散すれば炎は青くなる。
⑤したがって山用バーナーでの空焚きはどんなに喚起してもCOは発生する。暖をとるときにはナベや金網などを載せて炎に酸素を充分に供給するとCOの発生が抑えられる。
⑥台所用バーナーの真中の穴は炎に熱せられた空気が上昇し、ちょうど煙突のような作用をして炎に酸素を供給している。だてに大きな空洞があるわけではない。
以上いろいろ実験した結果です。
[ 2013/02/27 22:29 ] [ 編集 ]
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
[ 2013/02/14 07:06 ] [ 編集 ]
CO中毒
大変でしたね。車中泊通に言わせると電気毛布が一番だそうです。ガラスからの熱ロスはとても大きいので各窓に合わせた断熱材もはめ込みます。但し長時間使用ではサブバッテリーシステムが必要となるそうです。暖房目的で換気扇はあり得ません。お大事になさってください。
[ 2013/02/05 15:43 ] [ 編集 ]
車に換気扇
じつは今、真剣にそれを考えていたところです。
エンジンをかけてエアコンを回していればそれが換気扇なのでしょうね。
但し室内循環ではどうか?外気取入れでエンジンを切ったら通風口として
機能するのか?調べる方法は? 車内で線香を焚いて煙の流れを見ようか?ダメならリアドアを数ミリ開けておく工夫は?などなど。
これも結構楽しみです。結果が出たらこのブログで報告します。

[ 2013/02/03 08:33 ] [ 編集 ]
勉強になりました。
yamayaさん大事に至らなくて良かったですね。

そんなに危険とは全く知りませんでした。
冬は寒いので部屋を閉め切って石油ストーブをつけていたし
時間とともに臭くなっていました。
ガステーブルの上に換気扇があるのも法律で義務づけられて
いるそうです(IH,電気ヒーターは別)。
寒い朝など換気扇は回しませんし、換気扇の大事な意味を
全く知りませんでした。
車にも小さい吸気孔と換気扇がほしいですね。
[ 2013/02/02 21:11 ] [ 編集 ]
大変でしたね
yamayaさんのブログが東北の下山予定になってもすぐに更新されなかったので、どうしたのだろうと思っていました。
東北ではこんな大変なことになっていたのですね。
まずは、無事の帰宅ができてよかった。
これからも心配ですが、後遺症が出ないよう祈るばかりです。
さらには、冷静に今回の記録や情報を整理して発信してくださり、とても役立ちます。
ありがとうございました。
[ 2013/02/01 09:57 ] [ 編集 ]
良くわかりました。
「かなり頻繁に」ではなく「常に」ですか。良く分かりました。
冬場は常に窓を開けておくのはかなり辛いですが、命には代えられません。
いつも心掛けたいと思います。
[ 2013/02/01 09:34 ] [ 編集 ]
頻繁では足りない
「かなり頻繁に換気」では危険です。
火を炊いている間は常に換気していないと一酸化炭素が発生してしまいます。
僅かにあるだけでもヘモグロビンはそれを拾って優先して結合してしまうのですから。
これは私も初めて知ったことでした。
[ 2013/02/01 08:11 ] [ 編集 ]
気を付けます。
yamayaさん、大事に至らず本当に良かったですね。
一酸化炭素中毒は漠然と危ないと分かっていても、
実際どれだけ締め切っていたらダメなのかは分かりませんでした。
yamayaさんのお蔭で、かなり頻繁に換気をしなければと実感しました。
yamayaさんに後遺症が残らないこと、そして早く山に復帰されることを祈っています。
[ 2013/02/01 07:34 ] [ 編集 ]
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団塊世代前の自称”昔の山男”です。仕事に追いまくられている間は山どころではなかったけど、定年を機に青春を懐かしんでまた登り始めました。これからドンドン友達を増やして、青春を取り戻そうと目論んでいます。・・が、2年前に変人(片腎(腎臓を1コ切除))になってしまいましたので、ガンガンは無理だよな~~・・分かってはいるけど・・おまけに性格も悪いしな~
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